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「僕に助けてもらうことを望む前に、まずは自分だけで切り抜けられる術が本当にないのかを考えようよ。ねえ、魔術師?」
「あ」
その言葉を聞いて自分に備わった反撃手段を思い出したのか、黒髪の少年の目付きが豹変する。
捕食される側から、捕食する側へと。
全力逃走を止め、彼は振り返る。
涎を撒き散らして迫りくる魔物。
恐怖を払拭できたわけではない。
命を秤にかけようというのだから怖くて当然だ、と黒髪の少年は自分に言い聞かせる。
「……俺だって、見習いとはいえ魔術師なんだ」
ぎゅっ、と握った右の手。
そこにある感触を確かめるように、より強く拳を作る。
それは彼ら魔術師の武器。世界と自分との間にパスを創るために必要な媒体。
「ーーやってやる!!」
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