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だが、そんなことに思考を割いている余裕はない。
現状は相変わらずで、目下極楽へ全力疾走中なのだから。
と、そっちに気を向けすぎたせいで、黒髪の少年は自分の足に躓いてしまった。
全力疾走中であったこともあり、前方へ顔面から思いきりダイブ。
簡単に言えば、転んだ。
(あ、やばい。これは本気でかなりマズい)
ジリジリと、まるで臨場感を演出しているかのように、たった五メートルの距離を、魔物は時間をたっぷりと使って詰めてくる。
乱杭歯の覗く、力任せで腕力に引き裂かれたような魔物の口からは、血肉の味を連想したためか、それまで以上の勢いで涎が滴り落ちる。
追い詰められた黒髪の少年は、立ち上がる余裕もないまま、お尻を引き摺りながら後退してイザヤを見る。
2パック目の爆乳搾りに突入していた。
本当に助けてくれるつもりはないらしい、と理解した途端、本当に死ぬかもしれない状況になれば助けてくれる、という甘えが彼の中から消えた。
この根底にあった無意識な甘えが、先程の魔術を失敗させた要因の一つとも知らずに。
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