妻がいない

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そして俺は今、 明日美が狂うのと同時に、 明日美に起こった事実を知ることになってしまった。 今から2週間前の日曜日、明日美は小百合さんに呼び出されていた。 同棲していたころから結婚した今でも、小百合さんはたまに明日美を誘い、ランチに行くことがあった。 その日もそうだったようで、明日美は出掛けた。 俺はパチンコで明日美のいない休日を過ごしていた。 電話が鳴った。 加賀の運転する車が、明日美と小百合さんを乗せたまま山道のガードレールに突っ込んだらしい。 駆け付けた病院で、頭に包帯を巻いた明日美が叫んでいた。 「あああああああ」 明日美は狂っていた。 「おかあさん!おかあさん!」 必死に小百合さんを探していた。 「おかあさんごめんなさい!おかあさんごめんなさい!」 「おとうさんきもちいいよ、きもちいいのおぉ、おとうさん……!」 明日美は狂っていた。
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