妻がいない

5/6
前へ
/25ページ
次へ
ああ、予想が当たってしまった。 最も最悪なパターンで。 「おかあさん…きもちいいから、きもちいいから、もうやめて…」 明日美は泣きながら眠った。 きっと、いや、確実に。 明日美は 明日美は実の母親と義理の父親により、犯されていたんだ。 14歳の頃に。 明日美を担当していた外科の医者から勧められ、事故の後遺症や心理ケアのために精神科の医師も、明日美のベッドに問診に来ていた。 そして、今の明日美は〝自分を14歳だと思い込んでいる〟と伝えられた。 俺は14歳の女の子が泣きながら母親の機嫌を取るために、義理の父親にきもちいいと必死で喘(あえ)がなければいけない状況を思って吐いた。 明日美の目には俺が映ってなかった。 俺が話しかけても「おとうさん、やめて」としか言ってくれなかった。 そして、警察が明日美のもとにやって来た。 心理療法士がついて、カウンセリングをしながら事故の経緯について話していると〝14歳の明日美〟はパニックに陥ってしまった。 事故のことを思い出そうとすると、明日美は狂ったように頭を抱えて叫んでいた。 警察も諦めかけていた。 でも、明日美は思い出した。 あの日 起こった事故の全てを。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加