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―――…
少女は目が覚めた、
そこは暗い屋上
―――…
午前三時。
少女は屋上に居た。
真っ暗な闇の中、流れる雲をぼんやりと眺める。
昨日の出来事を思い出さない為に。
ジャリ…
音がした。たしかに今足音が―…
『何をしているんですか?』
優しげな物腰で訪ねてくる。
その人は―――
<先生。>
涙が溢れるのを必死にこらえた。
きっと今、私は迷子の子供がお母さんに会って泣きだす心境と同じなのだろう。
『悲しまないで、ほら。』
手が差し伸べられた。
私はその手をいとおしむかのように両手でそっと握った。
<大好き>――これが先生に対する私の気持ち。
真面目そうな黒髪に
白縁の眼鏡、白い肌。
彼は教師。
そう……先生。
持ってはいけない感情。
駄目だとわかってる。
『どうしたの?』
――ああ、そんな声で聞かないで。
『黙ってたら分からないよ』
――あなたが素敵すぎるから。
「ううん、なんでもないの…」
ようやく口から出た言葉はこんな陳腐な一言。
『そっか。凄く悲しげに見えたから。』
「別に…そんなこと…」
『…じゃあどうして君の頬はこんなに濡れているの?』
…ゾクッ
『…腕には煙草の火傷』
『足だって片足でしか立ててない。骨が折られているから』
…恐怖で足が竦む。
怖い…怖い怖い怖い!
「わ…たし……殺され…ちゃう…」
涙が溢れる。
「う…助け…て…ッ」
ふわり。
手が温かくなる。
『大丈夫です。君は心配しないで』
『僕が君を……』
――――……
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