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「あぁ、そうだった、大丈夫ですか?榮凪さん」
「ぁ…た、だ…ぃじょ……ハァハァ」
榮凪は相当な体力を消耗し、体力の限界に限りなく近い為、声すらも発する事が出来なかった。
それまで起こしていた上体を再び地面へと倒れ込ませる。
「ハァハァ…」
呼吸すらも儘ならない状態で、なんとか風爾轟太をとらえる。
「もう安心していいよ、食料を持ってきてあげたから」
と、言いながら剥き出しになった木の根を見る。
「え、あれを食べていたの!?人間は極限まで追い込まれると木の根さえも食べるのか…よし、合格!!じゃあ食料出してあげてーあと点滴も」
好奇な目で榮凪と木の根を見比べ、実験結果を目の当たりにしたような関心の表情を浮かべると、秘書らしき女性に食料を与えるように促す。
秘書らしき女性は背負っていたリュックサックを開けると中から、見覚えのあるオレンジ色の箱をいくつか鉄格子の前へと並べる。
「このカロリーメイクはまだ君が探偵事務所の若手営業マンだった頃、張り込みでよくこれを食べていたらしいじゃないか、確かに手頃に食べれて栄養もある程度は補給できる、だけど口の中がどうしてもパサつき、そのあとに不快なネットリ感がある、これを改善してくれれば僕は毎日食べてもいいかも」
しかし、榮凪は一向にそのカロリーメイクを食べようとはせず仰向けに寝転んだままだった。
「食べる体力さえも残されていないのか、じゃあ先点滴ね」
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