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「あの…まぁ…あれだ」
怯える林檎を余所に加賀は話を進める。
「返事だけどな…別に俺はいいぜ…」
「返事…?」
頭を掻き、少し照れながら言う彼の言葉の意味が全く理解出来ずにいた。
返事をもらうようなやりとりなど一切していない。
そもそもが初対面だというのに何らかのやり取りが行われているはずなどなかった。
「だからこれだよ」
ぶっきらぼうに右のポケットから出したそれは間違いなく林檎が窓から捨てた手紙であった。
「そ、それ!」
「読んだぜ?だからよ…しょうがねぇからしてやるよ…彼女に」
「え…?」
目が点とはまさに今の林檎の状態を言うのであろう。
捨てたはずの手紙を拾われた挙げ句、心中の相手でない者に告白の返事をされたのだ。
全くもっておかしな話ではないか。
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