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「僕は、教えたくもない情報をあげるんだから、それくらいいいんじゃない?」
「アンタ、自分がなに言ってるかわかってるの?」
見かねた有紀ちゃんは、髪をかき上げながら、呆れたように言いました。
「もちろん」
「あのね、林檎は加賀が好きで、アイツと付き合ってるのよ?」
「だけどそれは昨日までの話だ」
「!?アンタ……知って……」
平然と言った岬君の言葉を理解するのに、少し時間がかかりました。
どうして岬君が……
私が昨日、加賀君と別れたことを知っているような口振りです。
そんな筈はないのです。
だって昨日は放課後だったし、ほとんどの生徒が下校していていませんでした。
それをどうして岬君が……。
「こう見えても僕は情報通でね。昨日までの情報なら余裕で耳に入ってくる。特に丸井さん、君のことはね」
「何でアンタがそこまで林檎に執着するのよ」
流石は有紀ちゃんです。
オロオロする私を余所に、冷静な対応をしています。
ここは有紀ちゃんに任せた方がよさそうです。
「単純に気に入ったんだよ」
「気に入った?冗談は止めて。わかってるわ。アンタが加賀の女だからって理由で林檎に近付いたことも、ステータス欲しさに林檎に迫ったことも」
「ふふ。確かに最初はそうだった。僕を好きでいてくれる女の子には優しくするし、大事にする。僕が付き合おうって言って付き合わなかった子なんていなかった。だけど丸井さんは違う。最初は僕のことが好きだったのに、たった3ヶ月で君は加賀の方が好きになった」
「……ごめんなさい」
「責めてるんじゃない。ただ、皆から怖がられている加賀を本気で好きな君に惹かれたんだよ」
「え……?」
「丸井さんは、見た目やステータスで判断するような女の子とは違う。そして、僕にはないものを持ってる」
岬君は、今まで見せた怪しげな笑顔とは売って変わって、とても穏やかで、優しい笑顔を見せました。
こんな岬君も初めてです。
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