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「ないもの?」
「そう。純粋さと優しさ」
「……?」
純粋さと優しさ?
岬君が言ってる意味がよくわからないのです。
確かに岬君は、卑怯な事をしたり、怖い思いもしました。
でも…岬君は皆にも好かれているし、優しい事には変わりないのです。
「不思議?僕の優しさと丸井さんの優しさは全然別物だよ。僕は自分の利益に繋がる人間にしか優しくしないからね」
クスクスと笑う岬君。
相変わらず頬杖はついたままです。
「その発言は不利益じゃないの?」
腕を組ながら有紀ちゃんは呆れたように言いました。
「どうだろうね。どうとるかは丸井さん次第。とりあえず結論から言うと、僕は丸井さんを諦めるつもりはない」
「えっと……」
「これを気に付き合わない?」
困ってしまう私に、岬君は更にニッコリ笑います。
付き合わない?
岬君の言葉が頭の中で、渦を巻くようにこだまします。
こんな事を岬君に言われる女の子なんて、きっとこの先も数える程しかいないんだろうな……
そうは思うものの、今の私には迷惑としか言えない程、加賀君の事にしか興味がないのです。
きっと岬君は、ちゃんと付き合ったら優しくしてくれるんじゃないかと思います。
かっこよくて、頭も良くて、優しくしてくれる岬君。
加賀君みたいに「遊びだった」なんて言わない。
だけど……それでも私は岬君の言葉を受け入れることはできないのです。
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