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「有紀ちゃん、無理!」
「何言ってんのよ、林檎!せっかく書いたんだから出さなきゃ意味ないでしょ!」
そう声を大にして言う彼女は林檎の親友、七瀬有紀(ななせゆき)だ。
スレンダーで長身、ショートヘアーの美人な彼女は林檎の世話係でもある。
林檎に比べ恋愛もそこそこ経験のある有紀はたった今一通の手紙を巡って林檎ともめているところであった。
「渡さなきゃ何も始まらないよ?」
「うー…そうなんだけどさ…。やっぱり無理だよ…私なんかが…」
手紙を握りしめたまま林檎は悄気た表情をした。
高校生としては大人びていて男女問わず絶大な人気のある有紀に比べ林檎は童顔で背も小さく、有紀とは対照的な印象を与えていた。
林檎は自分に自信などないのだ。
今まで恋をしてもいつも見ているだけの恋で終わってしまった。
チャンスを伺っている内に気付くと片想いの相手には彼女ができてしまっているという結果がほとんどだ。
そんな過去の失敗を知っている有紀は何としてでも今回、林檎の恋を成就させたいと願っていた。
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