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林檎は恐怖と戦いながら俺にされるがままになっていた。 俺の事を好きなどころか、林檎にとっては重荷でしかなかった。 でも…これで林檎はやっと俺から解放される。 やっと本当に好きな男と過ごせる。 喜ばしい事じゃねぇか… アイツにはいつだって笑っていてほしい。 正直泣き顔見んのは辛ぇんだ… 今日だって… アイツは優しい奴だから、俺を騙すような形になった事に自分を責めたんだと思う。 だけど…泣いたアイツを本来抱きしめてやるのは、あの岬って男なんだと認めなきゃいけない。 諦めなきゃいけない。 そうはわかっていても、すももを見ると林檎の笑顔が頭から離れなかった。 “俺に慣れた頃に紹介してやるよ” そんな事を言った自分に羞恥心を感じた。 俺に慣れるなんて事はあり得ないのに… ただ一つ、まだアイツらに紹介しなかっただけよかったと思う。 俺のツレに紹介された林檎はきっともっと俺を重く感じたに違いない。 ここでおとなしく身を引く事が、精一杯の俺がアイツにしてやれる事。 「ッ…………」 俺は何年か振りに熱くなった目頭から水分がこぼれ落ちないよう、必死に耐えた。 「にゃー…」 すももは俺を慰めるかの様に静かに足元に寄り添って眠った。
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