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「はぁはぁ……や、やっと着いた!」
あれから体感時間で三十分ぐらいが経過して、ようやく博麗神社に到着した――はず。とりあえず山頂に着いたからここであってるだろ。
とりあえず二人を肩から降ろして地上に立たせる。その後は時間が動き出した時に二人が妙な感覚に陥らないように体のバランスを整えておく。……俺の名誉のために言っておくが、やましい気持ちなんてこれっぽっちも無いからな。
にしても、道中でいろんな奴にあったな。こんなにいい天気なのに雨傘を差してた奴とか、霊夢たちと同年代くらいのメイドとか、羽が生えてる子供とか。真っ黒な球体が浮かんでたりもしてビックリしたな。
「さて、そろそろ戻すか」
大分体力も戻ってきたし、バランスの調整も終わったし、頃合いだろう。
もう一度指を甲高く鳴らす。蝉のやかましい鳴き声が再び戻り、そよ風が吹き始め、雲はまた流れ始めた。
「着いたぜ、お二人さん」
「あ……え?」
「おわ! いつの間に!?」
霊夢は我ここに有らずといった様子で呆然としており、魔理沙は一瞬で着いたことにかなり驚いているみたいだ。この反応、おもしれぇなぁ。
「お~い、霊夢、大丈夫か?」
「え? えぇ、私は大丈夫よ」
「すごいなキサラギ! これがお前の能力か?」
「まぁね」
「でも変ね。何にもされてないはずなのに、なぜかお腹が痛いわ」
「霊夢もなのか? 実は私もなんだぜ」
まぁ三十分も肩で背負ってたわけだし、そうなるよな。
「……キサラギって時間を止められるの?」
「え」
嘘だろ? なんで分かったんだ? 魔理沙は気付いている素振りを見せてないし……もしかして霊夢って止まった世界でも意識だけはあったのか?
「図星のようね」
「マジかよキサラギ!」
「……なんでそんなに鋭いんだ」
「巫女の勘は当たりやすいのよ」
勘のレベルを軽く超えてるぞそれ。
「それに、同じような能力を持ってる奴もいるし」
「あー確かに、言われてみると咲夜の能力に感覚が似てたな。うまく口では言えないけど」
時間を止められる奴までいるのかよ。もう何でもありだな幻想郷。
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