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一息つくためにお茶を喉に流し込む。うめぇ……お茶なんて、最後に飲んだのはいつだったかな……。
「その後は、何にもない世界をただひたすら彷徨ってたな。灰が雪のように降りしきる中、誰かいないか……何か形のあるものが残ってないか、そんな無駄な希望を抱きながら」
「…………」
「ちなみに俺が全身真っ白なのも、ずっと灰の中にさらされてたから――って、なんか話が長引いちゃったな」
不老不死になった経緯だけを話すつもりが、余計なことまで話しちゃった。
「やっぱ、詰まんなかったろ? こんな暗い話は」
「私が最初になんて言ったか覚えてるか? 面白い面白くないは問題じゃない。私はキサラギの話を聞くのが面白そうだから聞いたんだぜ」
「外来人の話は私たちにとっては体験しようにも出来ないことだらけ。だから興味も出てくるし、面白味もある。中々、聞いてて面白かったわよ」
……本当に幻想郷って所は、すごい場所なんだな。今の話を聞いて面白いか……。
「というか、そんなことがあってよく自分を保てたな。私だったら発狂しててもおかしくないぜ?」
「保てるもんか。自我なんて世界が壊れる前から壊れてた。今、こうやって笑えてるのは世界を超えて旅をしてきたからだよ」
「世界を超えて? どういうこと?」
「俺が時間を止められるのはさっき霊夢が言い当てただろ? それは俺が持つ能力のうちの一つに過ぎないんだ。俺の能力はこっちの世界の言い方で言うなら、『時空を司る程度の能力』」
時間の停止、跳躍、世界線の跳躍……今判明していることだけだが、全て霊夢と魔理沙に打ち明けた。思えば、こんな傍から見たら馬鹿馬鹿しい話を嘘だと思わずに真面目に聞いてくれる人も初めてだな。
「世界線の跳躍……」
「そ。星の数ほど存在する世界は、世界線と呼ばれる分厚い線に阻まれている。俺はその線が僅かに緩む一瞬を突いて世界を超えられるんだ」
「じゃあ、ここにもその世界線ってのを超えて来たのか」
「いや、今回は八雲紫に招待……って言えばいいのかな、とにかくその人に呼ばれたんだ」
「また紫か」
霊夢が呆れた面持ちで溜息を吐きだすように言う。またってことは、頻繁に外来人を招いているのか。
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