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「とまあ、そんなこんなで世界を超えて旅して、その地の住人と交流を深めていくうちに、段々と自分を取り戻していくことに成功した……のかな」
実際の所、壊れる前の自分なんて覚えてないから、これが本当の自分なのかは定かではないんだけどね。
「いやぁ、大変だったんだなキサラギ」
「そうね。こっちの蓬莱人の過去と比べると、キサラギの過去の方が全然過酷だわ」
そうなのか? その辺は本人に聞いてみないと分からないから俺には判断できないけど、不老不死であるならその過去はやっぱり相当なものだったんだろうな。
「さてと……話も終わったところだし、そろそろ出発しようかな。お茶、美味しかったよ」
「あら、もう行くの?」
「もっとゆっくりしていってもいいんだぜ?」
「別にゆっくりしていってもいいんだけど、気になることを聞いちゃったからな。なんか、ジッとしてられないっていうか……」
急に探究心が芽生えてきた。これも旅人としての性(さが)かな。
「時を止める能力者のことと蓬莱人のこと?」
「あぁ。どちらにも会ってみたい」
「それなら紅魔館に行ってみるといいぜ。そこに十六夜咲夜っていうメイドがいるから、そいつに色々聞いてみるといい」
「蓬莱人については人里に行くといいわ。上白沢慧音っていう奴に聞くと案内してくれると思う。距離的にはどっちもどっちだから、どちらから行くかはキサラギ次第よ」
出発する旨を伝えると、二人は親切にも俺が興味のある場所を教えてくれた。こんな異端中の異端者である俺にこうまでしてくれるとは、幻想郷っていい場所だな本当!
「ありがとう霊夢、魔理沙。まずは気ままに歩いてみるよ」
今までもそうやって旅してきた。気ままに歩く、このスタンスはずっと貫いてきたしこれからもそうしていくつもりだ。
二人に別れを告げ、境内の出口前に立つ。眼前に広がるは今まで見てきた絶景と呼ばれるものと比べても遜色のない、自然豊かな光景。かすかに吹く気持ちの良いそよ風を受けながらその景色を見て、ある一つの確信が浮かんだ。
「この世界での旅は、面白いものになりそうだ――!」
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