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紫色のドレスに地につくほど長い金髪、白い手袋や特徴的な傘から貴婦人を彷彿させる姿だ。
ただ姿こそは高貴な印象を受けるものの、纏う雰囲気がどうも胡散臭い。
「はじめまして……だよな?」
「そうね、はじめまして。ところであなた、旅人なのかしら?」
「あぁそうだよ。世界を股に掛けて旅してる。でも、もうこの世界は踏破したから別の世界を探すところだったんだ」
「そう。それなら私の暮らす世界に来ない?」
「え?」
それは意外な申し出だった。私の暮らす世界って、この人も別の世界から来たのか?まさか自分と同じ能力を持つ人がいるなんて……。
「私の住む世界は幻想郷と呼ばれていて、多種多様な種族が暮らしている楽園のような場所よ」
怪しげな笑みを浮かべながら話を続ける女性。多種多様な種族……楽園……。
「そこは面白い?」
「もちろんですわ。人間が住むには少々危険がありますけど」
「最高じゃないか。是非連れてってくれ」
意外な形で見つかったな、次の世界。探す手間が省けて良かった。
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺はキサラギっていうんだ。よろしく」
「私は八雲紫。縁があったらまた会いましょう」
また会いましょうって、これから連れてってくれるんじゃないのか?
とその時だった。突然気持ち悪い浮遊感に襲われたのだ。
「えっ?」
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