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◆
「へっへーんだ! どうだ、参ったか!」
「女の子にも、勝てないなんて、悔しい!」
……ま、負けた。まさか小傘に負けるなんて……。
喧嘩は終始小傘にペースを握られっぱなしだった。こちらが仕掛ける前に驚かされ、その間にマウントポジションを取られてからの腋くすぐり攻撃。その場から動くことの出来なかった俺は降伏せざるを得なかった。
「はぁはぁ、まさか、傘から、でっかい舌が、飛び出るなんて……」
「奥の手は最後まで取っておくものだよ。ふっふっふ~」
ちなみにまだマウントポジションを取られたままである。腰辺りに座った小傘は、得意げに笑みを浮かべている。
「いい加減、どいてくれないか? 呼吸を、整えたい……」
「参った?」
「あぁ参った参った、俺が悪かったよ」
「よろしい、ならばどいてあげよう」
偉そうな態度しやがって……覚えてやがれ。
とりあえずベッドに寝転がって深呼吸する。それにしても小傘のくすぐりのレベルは計り知れないな。呼吸困難で本当に死ぬかと思った、死なないけど。
というか本気で体鍛えないと。こんな女の子に負けるような貧弱ぶり、正直言って情けない。
「ねぇねぇ」
「今度は何だ?」
「紅魔館を探検してみようよ、暇だし」
……とりあえずデコピンをかます。
「いったぁい!! いきなり何するの!?」
「お前なぁ、湖を渡る前に自分が言ってたことを思い出してみろ」
ここに着く直前まで必至に俺のこと止めてたくせに、この手の平を返したような態度の変わりぶり。
「あれはあれ、これはこれ」
「使用用途が間違ってる」
「うるさいなぁ、安全だから大丈夫なの」
「安全という根拠は?」
「だってレミリアさんいい人っぽかったし」
根拠になってねぇよそれは。レミリアのことを悪魔って呼んでただろお前。
「それに、いざとなったらキサラギ君が守ってくれるでしょ?」
「俺頼みかよ……まぁいいや」
俺も咲夜の仕事が終わるまでここで待つってのは退屈で嫌だからな。その提案に乗ってあげようじゃないか。
「それじゃあレッツゴー!」
「はいはい」
こうして紅魔館捜索のために俺達は客室を出たのであった。
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