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「とりあえず、右と左どっち行く?」
「じゃあ左で」
じゃあってなんだ。まぁいいや。小傘の意見に乗って左手の方に歩き始める。
それにしても、外観だけだと思ってた紅の塗装が実は内装も紅で埋め尽くされてるなんて。レミリアはよっぽど紅色が好きと見える。ただ、こうも紅一色だと俺の真っ白な姿は一際目立つな。
「うぅ~。早くも目がチカチカしてきた」
「この塗装は目に毒だよなぁ」
眼をパチパチと瞬(まばた)かせる小傘。血のように紅い色をした絨毯や壁、天井と本当に目のやり場に困る。窓がポツポツと並んでいるのがせめてもの救いか。
「俺の背中見てれば少しは楽になるかもよ?」
「そうさせてもらうよ……」
元気が無くなる程きついのか? 俺はまだ何ともないんだが。
小傘が俺の後ろに並んでからしばらく無言が続いた。その間にメイドらしき人と何度かすれ違った。いややっぱ人じゃないなあれ、だって背中から羽生えてたし。というかメイドなのか? メイドらしい所といえばメイド服を着てるくらいで、仕事は全くやってないように見えたんだが。
「ねぇねぇ」
そんな人間じゃないメイドっぽい何かについて色々考えていると背後の小傘から声が聞こえた。
「ん? どした?」
「湖で私が溺れかけた時さ、どうやって助けてくれたのか、まだ聞いてないんだけど」
「……あー、そういえば言ってなかったな」
廊下で咲夜から能力のこと聞いてる時に察してくれたと思っていたけど、違ったか。
ここで小傘に俺の能力について簡単に説明しておく。
「――というわけだ。分かった?」
「分かったけど、その能力ずるくない?」
「……その意見には同意するよ」
どう考えたって卑怯だからな。時間を止めてしまえば本当に何だって出来てしまう。強盗とか殺人とか気になるあの子へのセクハラとか…………セクハラなんてしないからな俺は。
説明が終わった後、しばらく歩いていると長らく変化のなかった光景に終止符が打たれたのか、ついに変化が訪れた。
「ここは……」
「エントランスだね」
とどのつまり、俺達は咲夜に案内されて来た道を戻ってきたということだ。来た道くらい覚えてろよ俺。
「誰かいる……」
「どこどこ?」
「ほら玄関の近く」
小傘が指さす位置には二人の男女がいた。あれは沙倉と……もう一人は知らない奴だ。
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