30人が本棚に入れています
本棚に追加
そのまま二階の手摺から様子を見る。
「何話してるんだろうね」
「ここからじゃよく聞こえないな」
声色が調子良さげに聞こえる。ってことはやっぱり親しい間柄なんだろうな。
「兄妹なのかな?」
「うーん、どうだろうなぁ……。あっ」
男の方がこっちに気付いたみたいだ。視線が僅かに動いてこちらを見ている。それに釣られて沙倉もこちらを振り返る。
「しょうがない。行くぞ、小傘」
「え? 何で?」
「……向こうさんが気付いたからだよ。挨拶挨拶」
「あぁなるほど」
気付かれたことに気付いてないなんて……。
すぐそばの階段の手摺に乗っかって滑り台のように一階へと降りる。ちなみに小傘は普通に降りてきた。まぁ女の子だし、仕方ないね。
一階に降り立った後は沙倉達の方に歩く。沙倉はちょっと前に俺達に気付いて元気よく手を振っていた。対する男の方は静かにこちらに歩いてきている。
男との距離は段々狭まって、ちょうどいい間合いになり挨拶しようと口を開いた時――
「よ――」
「不意打御免!」
「ぶるぅぁぁああ!」
精一杯ぶんなぐられた。俺が何をしたって言うんだ……。
「キサラギ君!?」
「ちょっ、夏! 何やってんの!?」
「いや、殴ったら何か分かるかなぁって思って」
そんなんで分かったら、対話なんて必要ないじゃない……。まぁ全身真っ白の変質者みたいな外見だし、分からなくもないけど……。
「キサラギさん、ごめんなさい。夏ってば早とちりし過ぎで……」
「あぁいいよ気にしなくて。あと普通に話してくれ、名前も呼び捨てでいい。なんか距離があるみたいで嫌だし」
正直そこまで痛みは感じなかったし、軽いノリで殴ったんだろうな。それでも初対面で殴るのはどうかと思うが。
最初のコメントを投稿しよう!