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一気に視線が集まってきた。それも“何言ってんのこいつ?”みたいな感情が込められたものが。
「いやいや、どうしてそうなる?」
「ちょっと興味出てきたから。どんくらい強いのかなぁって思ってさ」
「やめといたほうがいいよ。夏は強いから」
へぇ……あんなに凄い力を持つ沙倉が強いっていう程なのか。
「沙倉がそう言うなら尚更興味湧いて来たよ」
「やめときなよ、私との喧嘩にすら勝てない貧弱君の癖に」
「キサラギ……おまえ小傘に負けたのか?」
小傘、相当根に持ってるな。そんなに俺の似合わない発言が気に入らなかったのか?
夏の問いに頷きで返す。すると呆れを含んだ溜息をつきながら言葉が返ってきた。
「小傘のようなか弱い少女との喧嘩に負けるんじゃ話にならないな。俺のパンチも見切れてなかったみたいだし……何より俺には時間がないんだ」
「時間がない、ねぇ……」
ちょっとばかしカチンときちゃったぜ。いやまぁ夏の言ってることは正論なんだが、このまま帰したんじゃプライドが泣いちゃうな。
というわけで、少し如何様をさせてもらおうか。
(THE・ワールド!! 時は止まる!!)
一度言ってみたかったんだよねこの言葉。言ってないけど……まぁそんなことは今はどうでもいいんだ。時間が止まった今、俺の動きを感知できる者はいない。
そそくさと夏の背後に回り、時止めを解除する。
「なら聞くけどさ……」
背後から急に声が聞こえてびっくりしたのか、勢いよく振り向く夏。その後ろに見える沙倉と小傘も吃驚しているように見える。
「今の俺の動き、見切れたの?」
意地悪く笑みを見せながら言う俺。くぅ~、なんかこう、悪戯が成功したみたいで面白いぜ。
当の本人は非常に困惑しているようだったが、また一つ溜息を吐いて口を開いた。
「……手早に終わらせるぞ」
「あぁ時間は気にするな。一瞬で終わる」
なんだか挑発みたいに聞こえるなこの言葉。だけど俺の意図はこの言葉通りだからな。
一歩近づいて夏の手を取り、能力を発動させる。今、この時が止まった世界にて自由に動ける者は、俺と夏の二人だけになった。
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