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「!?」
「心配するな、別に死にはしないさ」
恐らくは急に物音が聞こえなくなったことを不審に思ったんだろうな。夏は俺から一歩後ずさって周りを警戒するように見回す。
「どうなってるんだ!? これは、一体……!?」
「ようこそ、時が止まった世界へ」
「時が……止まった!? どういうことだ!?」
「文字通りだよ。なんならこれを見るといい」
そう言ってポケットからあるものを取り出し、夏へと投げ渡す。夏はそれを受け取った後、驚愕の表情を浮かべながらあるものを凝視していた。
「これは……」
「一応言っておくが、故障はしてないからな」
「秒針が止まっている……! キサラギ、お前……」
「信じてもらえたかな? これが俺の能力だよ、夏」
実は時間停止する時に、誰かと接触していればそいつを停止した世界に招待できるのだ。
「……ってことは、さっきのもこれを使ってか?」
「御名答。なかなか鋭いな」
「嵌められた……」
夏は顔に手を当て、正しく“やられた……”という表情を見せる。その後、気持ちの整理がついたのかこちらに近づき懐中時計を手渡してくれた。
「で、どこでする? 時間が止まってるんならいくらやってもいいんだろ?」
「もちだ。紅魔館の庭でするか、あそこなら広いからやりやすいだろう」
そうと決まれば即行動、俺と夏は並んで紅魔館から出る。沙倉と小傘はその場に放置するしかないな。ちょっと気が引けるが。
庭に出て、互いの距離を離す。大体十メートル程かな。
「やるからには全力で行くぜ」
「そうこなくちゃ面白くないな」
その言葉を皮切りに、夏との戦いが始まった。
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