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◆
「先手必勝!」
夏が気合を入れるが如く叫ぶと、みるみるうちに頭髪と瞳の色がそれぞれ赤と琥珀色に変化した。まさか夏も沙倉と同じように……。
「行くぜ! 火竜――」
夏は力をためるような構えを取る。その間に夏の掌に小さな炎が灯る。
って観察してる場合じゃないな。こっちも勝つべく動かないと。
とにかく、攻撃するために様子を見ながら夏に接近する。こっちは体術しかないんだ、近寄らないと話にならない。
夏の掌に灯った炎は徐々に勢いを増していく。
「――炎竜弾!!」
技名と共に掌をこちらに向ける。掌から離れた炎は、俺一人くらいなら丸々飲み込めるほどの球に変化して迫ってきた。
「何!?」
炎弾はなかなかのスピードとその大きさで俺を圧倒する。
「ちぃっ!」
間一髪、横に飛び込んで回避する……が――。
「折り込み済みだ!」
――回避した先に夏が待ち構えていた。しくじった……あの炎弾は目くらましも兼ねていたのか! なかなかやるじゃないか、だが……!
「喰らえ!」
夏は隙だらけになった俺の顔めがけて拳を振り下ろす。
「遅い!」
地面に着いていた四肢に力を入れて、夏の懐に突進。拳は空振りし、俺の肘鉄は腹部に命中した。
「ぐぅっ!!」
その衝撃を夏は利用し、一旦後退する。気のせいか、突進した時に凄い熱気に包まれたような……。
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