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「さぁ、次はこっちの番だ!」
動揺が収まらないうちに接近する。やるなら今のうちだ!
体感速度を遅くしつつ、夏にラッシュを仕掛ける。拳による乱打はもちろん時々蹴りを加える。
しかし夏はそれを全て防いでみせる。なんて反応速度だ、速度はこちらが上回っているというのに。
「守りの竜ってのは伊達じゃないな!」
「ったりめぇだ!! くっ!」
正面がだめなら、後方はどうだ!
滑るように俺は夏の後方に回り込む。それに夏の動きはまだ対応できていない。
「ふんっ!」
ガラ空きの背中に肘鉄を入れる。流石の夏も防御が間に合わず、吹っ飛ばされる。
「っは!!」
おそらくは体内の空気が押し出されたんだろう。今すぐ酸素を吸い込みたいところだろうが、そうはさせない!
急いで夏の正面に回る。夏の表情は頭が下がっていたためよく見えなかったが、痛みに歪んでいることは確かだ。
「決めさせてもらうぜ!」
拳を振り上げ腹に叩きこむ。その衝撃で夏の体は少し浮く。
「まだまだ!!」
拳の連打をどんどんかましていく。浮いたまま夏は何も仕掛けてこない。当然か、これだけの攻撃を喰らっているのだ、何も出来るわけがない。
「止めだ!!」
一旦連打を止めて夏を地に着かせた後、一際強い力を込めて殴りかかる。
しかしそれが間違いだった。夏は何も出来なかったのではなく、何もしてこなかったのだ。全てはこの瞬間のために――。
「火竜――」
こちらの動きが衝撃で止まってしまうほどの迫力が夏から放出された。その右腕には豪炎武の時とは比べ物にならないほどの強さと火力を秘めた炎。
「――炎守竜!!!」
俺が硬直している隙を逃さず、夏は右腕を突きだす。至近距離で放たれたその技は、俺を包み込み、全てを焼き尽くした。
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