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「それじゃあ、俺はもう行くよ」
「そうか。機会があればまたやろうぜ」
振り返り門の方を向いた夏は俺の言葉に手を上げて答える。
途端に夏の髪の毛が伸び始める。よく見ると髪だけじゃなく爪なんかも伸びていて、禍々しい力を放ち始めた。
「じゃあな!」
そして夏は一言別れの言葉を残し、大空へと舞い上がる。その様子を見てこっちが聞きたくなってきたことがある。
「あいつ人間か?」
突然目の色が変わるかと思ったら今度は髪が伸びるって……人間染みてないぞ。
「おーい、キサラギくーん」
声がしたので振り返ると、紅魔館から小傘と沙倉が向かってきていた。そういえばほったらかしにしてたんだっけ。
「急にいなくなるからどうしたのかと思ったよ」
「悪かったな」
心配する小傘をよそに、沙倉は誰かを探すように辺りを見回している。
「あれ、夏がいない……」
「夏なら今帰ったよ。急に髪を伸ばして空飛んで」
「え、じゃあ夏さんと戦わなかったの?」
至極残念そうに言うな。そんなに俺がやられる所を見たかったのか小傘。
「いや、夏とはもう戦ったよ」
「でもまだ一分近くしか経ってないし……夏が敵前逃亡するとも考えられないし……」
「あー、説明するとだな……――」
紅魔館に戻りながら小傘と沙倉に今起きていたことを話す。小傘にはさっき俺の能力について説明していたから分かるが、沙倉がすんなりと理解したことに驚いた。頭の回転の速い娘だなぁ。
「時間を止める……咲夜さんと同じ能力なんですね」
「厳密に言えば違うけど、同じようなものか」
あ、沙倉は咲夜のこと知ってたから理解できたのか。道理でなぁ。
「さて、俺達は紅魔館の探検を再開するとして、沙倉はどうするんだ?」
場所はエントランスに戻り、今後の予定を沙倉に聞いてみる。
「私は自分の部屋に戻るよ。やらなきゃいけないことあるし」
「そうか」
「沙倉ちゃんがいれば心強いんだけどなぁ……」
ごめんね、と残念そうに謝る沙倉。まぁ優先順位ってのもあるし仕方ないか。
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