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「ねぇねぇ、あなたは食べてもいい人類なの?」
俺に跨がりながら物騒過ぎることを聞いてきたのは、見た目がひどく幼い女の子だった。
赤いお札のようなリボンを飾った短い金髪に深紅の瞳、白い洋服の上に黒のロングスカートを着たその姿はちょっと変わった少女そのものだった。……牙を覗かせながら顔を紅潮させてハァハァ言ってなければ。
え? もしかしてこれ貞操の危機?
「いい加減答えないと食べちゃうぞぉ」
「ま、待て。とりあえずその手を退かそう。話はそれからだ」
そういうと少女は素直に首を絞めていた手を退けてくれた。
「それで? あなたは食べてもいいの?」
「……食べられると困る」
「私だってあなたを食べないと困っちゃう。もう三日三晩なんにも食べてないんだよ」
それは困ったな……。だからって黙って食われる訳にもいかんが。
しばらくの間、沈黙の時間が続いた。少女は瞳を濡らし涎を垂らしながらこちらを見つめ、俺は脱出しようとするも少女に押さえ付けられて動けずにいた。非力さがこんなところで裏目に出るとは。
その沈黙を破ったのは少女だった。
「もう我慢できないっ!!」
そう言い放った後、あーっと口を一際大きく開けて首筋に噛み付いてきた。
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