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「いっ!?」
鋭い痛みが走った。貞操の危機とか言ってる場合じゃなかったな……。しかし次の瞬間には、そんな考えは吹き飛んでしまった。
ブチブチと千切れる音と同時に凄まじい痛みに襲われた。
あまりのショックに体が痙攣を始める。噛み千切られた所――頸動脈辺りから夥しい量の血液が流れ出ていくのを感じる。
「おいしい……」
恍惚とした表情で千切った物を噛み締めている少女。やがてゴックンと飲み込むと、その様子を見ていた俺と目が合う。
「まだ意識があるの?珍しいね」
生憎、そういう体質なんでね。体は動かせないが。
「苦しそうだけど、もう大丈夫。すぐに楽になるよ」
少女はそう言って微笑むと俺が着ているTシャツを破り捨て、腹にかぶりついた。
耐え難い激痛が走るが気絶することはないし、絶命することもない。そのまま内臓を食い散らかされようとも、俺は微動だにせずただその光景を見ることしか出来なかった。
少女の捕食行為が終わったのはそれから三十分経った後のことだった。
終始為す術がなかった俺は、せめてそのグロテスクな行為から目を逸らそうと激痛に耐えながら瞼を必死になって閉じていた。
少女は俺を捕食し終えて満足したのか、鼻歌を歌いながら何処かへ去っていった。
「……いってぇ」
血は一滴残らず流れ出て、肉という肉は全て食い尽くされてしまった。
これまで沢山の世界を渡り歩いてきたが、食べられるというのは初体験だ。超痛い。おまけに体も満足に動かせない。
「もう食べられるのは、御免だなっ……」
なんとかして体を横に倒す。血溜まりになっていたそこは倒れ込むだけで血が跳ねた。
すると今度は眠気に襲われた。まだ体の修復もまだなのに…………まぁいいや……寝てるうちに……治るだろ……。
そうして眠気に負けて血溜まりの中、俺は眠りについた。
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