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鳥の爽やかな鳴き声と眩しい木漏れ日が朝が来たことを告げる、と同時に俺を夢の世界から現実へと引き戻した。
あれから何時間経ったのか知らないが、もう俺の体は完治したみたいだ。
骨しか見えなかった胴体は完全に復元され、流れ出てしまった血液は全て体内でいつも通り循環している……はず。ビリビリと破かれてしまったTシャツも何故か復元されている。おそらく服も体の一部ってことになってるんだろう。
「~~っ、ふぅ」
上体を起こして体を伸ばす。うん、体調は万全、いつでも行けるな。
にしても、昨日は散々だったな。来て早々殺される羽目になるなんて。次からは気をつけなきゃ。
「珍しいな、人間が魔法の森にいるなんて」
そう思った矢先、誰かから声をかけられた。見上げた先には昨晩の少女よりは若干大人っぽい少女がいた。
側面の一部をおさげにした長い金髪に黒い三角帽、白い服の上に黒いスカートと白のエプロン、手に持った箒、とどこから見ても魔法使いにしか見えないその少女は怪訝な目つきをしながらこちらを見ている。
「ここは魔法の森っていうのか」
「ん? お前知らないで入ってきたのか? 命知らずだなぁ」
「どういうことなんだ?」
「ここ魔法の森は妖気に溢れててな、普通の人間は長い間いるとヤバいんだよ」
「へぇ……」
紫はそれを分かってた上で俺をここに呼び出したのか。それとも俺の体質を知っててここにしたのか。どちらにしろ、もうちょっと安全な所に呼び出してほしかったな。
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