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「――まぁざっとこんなところね」
「ん、ありがとう。おかげで進路が固くなったよ」
結局聞きました。だって知っておけるものは知っておきたいじゃない。
「さてと、いい感じに眠気が来たから私は帰るわ」
「あ、そうだ。紫に聞きたい……というか相談したいことが――」
「眠いと言ったのよ。本日の営業はもう終了。他を当たりなさい」
そう言うと紫は洞穴に潜るようにノッソリと空間の中に入っていく。しまった遅かったか。
「まぁ敢えて一言だけ言うなら」
と思ったら、まだギリギリセーフだったらしい。
「今は気にする必要なし、時が経てばいずれ解決するわ」
「一言に収まってるか、それ?」
「やかましい。それじゃ」
それを最後に紫の姿が消えて、空間の切れ目が元通りになった。あの胡散臭い雰囲気も綺麗に無くなっている。
……何も言ってないのに、こっちが求めてた答えを正確に言い当てやがった。気にする必要はない、か……。
「……おはよう、キサラギ君」
「うおぉうっ!?」
いきなり後ろから淡白な声で挨拶を受ける。少し反応が過剰すぎやしないか俺?
振り向くとさっきまで寝ていた小傘が布団から上半身を起こしてぼーっとしていた。
「今起きたのか。おはよう小傘、いや今はこんにちはか?」
「…………」
こちらも曖昧な挨拶を返すが、小傘は眠気眼を手で擦るばかりで一言も話さない。もしかして低血圧?
「キサラギ君……」
「ん?」
「なんか頭が痛い……。それに、少し気持ち悪い……」
ようやく口を開いたかと思ったら、半目でそう訴えられた。おいおい、マジか。お前昨日酒飲んでないって言っただろ……あ、分かった。
「さては小傘、俺が寝た後に酒飲んだな」
「そんなことない。キサラギ君が寝た後に私も布団に入ったんだし」
違うのか。じゃあなんで二日酔いになってんだよ……。
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