翌日、夢の中で

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「頭が……割れる……」 「いっそのこと中身ぶちまけなさい」 「御免……被る」 余りの痛さに、その辺に倒れ込んでもがき苦しんでいると頭上から酷な言葉が降り注がれた。 「なんだいたのか霊夢」 「よくもまあいけしゃあしゃあと……覚悟はできてんでしょうね?」 見上げると、そこにはお祓い棒を持った霊夢が鬼神のごとき形相で仁王立ちしていた。周りに陰陽玉らしき物が浮遊している……あれか、さっき当たったのは。 ていうか、お前どっから出てきた? 「覚悟? なんのこっちゃ?」 「鬼が言ってたわ。鬼脅を振り撒いたのはあなただと」 「……あぁー、そういうこと」 つまりあれだ。昨日の騒ぎの元凶たる俺を今から成敗するのか。まぁ萃香達がばらしたのは責められんよな、鬼は嘘を吐けないし。 「いいよ。咎は受けるさ。煮るなり焼くなりお好きにどうぞ」 まぁ最終的にはこうなるって分かってたし、それなら無駄に抵抗するよりは何もしないほうが早く終わるだろ。 「じゃあ遠慮なく――」 「ただその前に水を一杯くれ。小傘に飲ませてあげたい」 でもそれに付き合ってたら小傘に水を届けるのが遅くなっちまう。それだけは避けなきゃいかん。 「……理由は?」 「酒を飲んでないのに二日酔いっぽくなってる。出来るだけ楽にさせてあげたい」 「飲んでないのに?」 霊夢の疑問に肯定の意を示すと、しばらく顎に手をやって考え始めた霊夢。その間も表情は変わらないまま。正直怖いわ。 「おそらくは酒気に呑まれたんでしょうね」 「あぁ成る程。確かあいつ弱いっていうか飲めないもんな、酒」 この境内に広がるむせ返るほどの酒気。その強さは酒に弱い奴ならそこにいるだけで酔ってしまうほどだろう。 となると、昨日の小傘は酔ってたってことになるのか?するとあれも酔った勢い? いや、考えるのは止めよう。今はそれよりもすべきことがある。 「付いてきなさい」 「あら?」 剥がれることはないと思っていた鬼神の形相が、しかめっ面にランクダウンした。 「水がいるんでしょ?ある場所に案内するわ」 「もしかして俺許された?」 「あ゛あぁん?」 「ですよねー」 まぁなんにせよ、目的は達成できたんだ。良しとするか。
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