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「まぁなんだ、今はゆっくりしてろ。このままいても旅の邪魔にはならないから」
そう言って俺は強引に小傘を寝かせる。
「でも……」
「何を急いでるのか知らんがな、俺はここ数日は何もしない予定だぞ」
意外そうに目を丸くする小傘。多分旅人のことを勘違いしてるな。
「行くべき時に行き、楽しむべき時に楽しめ。これに従うのが俺の中での旅人ってやつだな」
まぁ俺に旅を教えてくれた師匠の受け売りなんだがな。
「ここ数日で行くべき所は人里くらいだ。そこに行くなら小傘と一緒の方がいいだろ?納得したか?」
「うぅ、分かった。でも起きとく方が楽だから起きとく」
なんかまだ不服そうだな。でも一応分かってはいるみたいだしいいか。
ちなみに他に行く場所と行くべきタイミングも紫に教えてもらったからバッチリだ。
残りの夏は人里と命蓮寺でお祭り、秋には妖怪の山で秋の景観を楽しむ。冬は雪を見ながらの地霊温泉、春は白玉楼で花見と、少なくとも一年は滞在する予定になった。季節の合間には紫に教えられなかった場所を好き勝手に歩き回ろうと思う。
「さてと、それじゃ俺は霊夢にこき使われに行きますかね」
「え? どうして?」
「自業自得」
それだけ言うと小傘も訳が分かったのか、何も言わなかった。
実は湯呑みを貰った時、霊夢にフルボッコの代替案として宴会場の後始末を提案してみたのだ。結果は成功、あの惨事の片付けでチャラにしてもらうことになった。
しかし腑に落ちないな。あんだけ怒ってたのに、すんなり提案に乗るなんて。
そういえばあの時霊夢は空から降ってきた新聞を見てたような……深く考える必要はないか。罰が安く済んだんだ、霊夢の寛大さに感謝しとこう。
空になった二つの湯呑みを持って外に出て、霊夢の待つ境内に急ぐ。
無事に出会えたのはいいんだが、思わぬ問題が浮上しちゃったな。
旅先での恋。旅を生き甲斐とする俺にとっては、何よりも辛い問題だ。
「悩んでても仕方ない……か」
今は目先のことに集中しよう、なんて本日三回目の単語が浮かんだところで考えを打ち切り、俺は霊夢の元に駆けた。
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