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ピンポ―ン
着替えを適当につめたボストンバックを片手に桂吾の部屋を訪ねる
一回のチャイムで出てきた不機嫌な桂吾に、苦笑いで俺は頭を下げた
『ごめん』
ガシ‥
ガシガシガシガシガシ
『いたたたた、桂吾痛い‥‥』
下げた頭を強く撫で
ふわりと煙草の匂いを漂わせる桂吾は、いつもよりだらしない恰好でピンで止めていた前髪は下ろし一見するとクールなイケメン風だ
前髪下ろすだけでこんなに変わるなんて(笑)
「‥‥クロが決めた事なら反対はせえへん。でも、お前は逢魔屋の鳩で俺の鳩だって事忘れたらアカンで?」
言葉を返さず頷く
「あのクソ社長に何て言われたか知らんが、やるからにはクロの思うままにやって来たらええ
寧ろ、むちゃくちゃにしてきても良いくらいや。んで、全部終わったらちゃんと俺の所に戻って来る事」
『うん。1ヶ月ちょっとで帰って来るから』
だから、そんなに寂しそうな顔しないで?
いく宛の無い俺を最初に見つけて優しくしてくれたのは桂吾だから
俺が帰る場所はここにしかないってわかってるよ
『桂吾は俺のお兄ちゃんだもんな』
照れくさそうに笑うと程よい太さの腕に抱きしめられ胸に顔を埋める
服や髪に染み付いた煙草の匂いがキツい
『吸いすぎは良くない、俺が帰ってくる迄に減らしといて』
「手が係る弟が心配で本数が増えたんや、俺が肺癌になる前に1日でも早く帰って来い」
『はは、了解!!』
元気良く顔を上げて返事をすれば桂吾の顔が迫って来て頭にキスをされる
何故か桂吾とはこんな甘い雰囲気になることが多々あるが、俺は家族同士のスキンシップの範囲だと考える様にしている
だって、桂吾の俺への接し方って自分の子供を甘やかす親みたいなんだもん
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