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彩斗Side――
クロが走り去ってから十分弱、俺はその場を動けずにいた
最後に見たクロの瞳の揺めきが何を意味していたのか‥
本当だったら喜ぶべき事かもしれない、しかしどうしても喜ぶ気にはなれなかった
初めて本気で好きになり触れることが怖くなり
今までみたいに俺に刷りよる奴等の様に扱ってはいけない
唐突にそう思った
壊れものに触れるように頭を撫でたり
初めて見たクロの顔を見つめたり
俺に向けられた声に喜びを感じた
いつか、この距離が縮まるれば良いと漠然と望むだけ
だから今は友達のままでも満足だとそう思っていた
しかし、本当はクロの隣に立つに相応しい男では無いと自覚していたからではないのか?
例え、少なからず他者より強かろうとクロの隣に立つには余りにも弱い
そんな俺では駄目なんだと心の何処かで分かっていた
「‥‥何故、キスをした?」
走り去る瞬間、俺より背の低いクロが引き寄せる様に首に手をかけ
触れるだけのキスを唇の端にした‥‥
迷いのある瞳に何を思ったのか
どうしたらお前の隣に立てる?
‥‥俺も変わらなければいけない
そして、お前の迷いを取り去れるくらいの男になりたい‥
でなければ、お前の側にいる資格など無い
無いんだ‥‥
(彩斗Side―out)
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