1.首なしカラスの死骸

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 新垣はそれを見て吐きそうになった。込み上げてくるものを何とか抑えようと、今度は両手で口元を塞ぐ。 「ガッキー。職員室から新聞紙とゴミ袋持って来て。あと洗浄液と消臭剤もよろしく」  そんな新垣の様子を見て、秋穂がそう指示した。ちなみに「ガッキー」とは、秋穂が勝手に付けた新垣のあだ名である。  新垣は頷くと、駆け足で教室を出て行った。 「しかしまあ、惨(むご)いことするねえ。動物愛護団体に訴えられるぞ」 「これをやった奴に心当たりはないのか?」 「心当たりのある奴が多過ぎてわかりません」  秋穂の答えに、換気のために窓を開けていた城崎の手が止まる。 「…何だと?」 「ま、犯人捜しはこっちで適当にやっときますんでご心配なく」  秋穂は城崎に不敵な笑みを向けると、カラスの死骸をつん、と指で突いた。
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