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ざく、ざく、とスコップを何度も何度も土に突き刺す。単調な穴掘り作業を、新垣は文句も言わずに繰り返していた。
「…本当に埋めるんですか?」
「そうよ。哀れな首なしカラスさんを埋葬してあげるの」
新垣の問いに、片手にゴミ袋をぶら下げた秋穂が答える。その中身は、先程のカラスの死骸だ。
「でもここ、学校の花壇ですよね。カラスの死骸なんて埋めちゃっていいんですか?」
「問題なし。理事長の許可は取ってあるから」
「…許可なんていつ取ったんです?」
「ついさっき。メールで」
「………」
「いい肥料になるよって言ったら、それは助かるって。植え替えの時期で花もないし、丁度いいでしょ」
「…理事長とは仲がいいんですか」
「まあね」
「…へえ」
新垣はそれきり無言になった。拗ねたように口を尖らせ、穴掘りを続ける。
学校の花壇にカラスの死骸を埋めるなんて非常識だが、それでも秋穂が言うなら従おうと思う。秋穂の負担が少しでも減らせるなら、穴掘りだって苦ではない。
ただ、新垣にとって、秋穂と理事長が気軽にメールを交換するくらい親密な関係であることが気に入らなかった。
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