1.首なしカラスの死骸

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「ちょっとそこに立ってくれない?」  秋穂はそんな新垣の様子を気にすることなく、出来上がった穴の前にしゃがみ込んで右斜め後方を指差す。 「え。ここ、ですか?」 「そうそう。それでこっちに背中向けて」 「こうですか」 「完璧。もし生徒たちが来たら、取りあえず笑顔で手でも振って。挨拶運動してる感じで怪しまれないように」 「……あの。どうしてそんなこと…」 「これ見つかったら面倒でしょ?だから隠してほしいのよ」  なるほど、と新垣は納得した。確かに、今の位置に自分が立っていれば、小柄な秋穂の体は生徒たちが登校して来る校門側からは見えない。 「終わったら言うから、それまで絶対に振り向いちゃダメよ」 「でもまだ8時になってないし、生徒たちが来る気配はないですよ?」 「油断大敵」 「いや、そうですけど、少しくらいなら埋めるの手伝え――」 「ガッキー」  秋穂が新垣の言葉を遮る。 「あんた死骸とかに耐性ないんだから、無理に手伝わなくていーの。それよりしっかり見張りしててよ」  そこで新垣は気づいた。これは秋穂なりの気遣いだと。 「わかった?」  やっぱり優しい人だ。口元を緩ませながら、新垣ははいと頷いた。
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