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「じゃじゃーん」
秋穂の明るい声が聞こえ、作業がすべて終わったらしいと判断した新垣は後ろを振り返った。
穴を掘る前と変わらない、湿った茶色い土が平らに広がる花壇。しかしそこに、先程まではなかった"あるもの"があった。
「カラスさんのお墓」――マジックでそう書かれた小さめのプレートが、中央に突き刺さっていた。
「どう?我ながら完璧な埋葬だよ」
「……そのプレートは、必要ないんじゃ…?」
「これがないとお墓っぽくないじゃん」
「…真島先生は、生徒たちにカラスの死骸のこと、知られたくないんですよね?」
「出来ればね」
「それならどうして、わざと目立たせるようなことを…」
「関係ない生徒たちに知られて騒がれるのは面倒だから嫌だけど、犯人には知らせてやりたいのよ。あんたが殺したカラスはあたしが丁寧に葬ってやったぜ、ってね」
秋穂は戸惑う新垣に悪戯っぽい笑みを向けると、近くに生えていたコスモスを一輪引っこ抜いて花壇に投げた。
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