2.それはまるで

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 教壇に立つその姿を、佐伯直人(さえきなおひと)は廊下側の一番後ろの席から静かに見つめていた。黒板にもたれ、けだるそうに話をしているのは担任の真島秋穂だ。  この私立白峯高等学校に2年間勤めている彼女は、とにかく異質な存在だった。  スーツなどの小綺麗な服に身を包んだ他の教師たちとは違い、秋穂は黒のスカートと黒のパーカ姿が主流だった。パーカを脱ぐことは滅多にない。それどころか時折、そのフードを頭に被ったりしている。  そんな秋穂は性格も"ぶっ飛んで"いた。  4ヶ月前、入学式の担任紹介挨拶で秋穂は、期待と不安に胸躍らせる新1年生たちにこう言ったのだ。 『頭のおかしいガキは大歓迎だよ。いつでもかかってこい。――あ。入学おめでとう』  この発言で体育館は一時騒然となった。しかし新米教師を除く他の教師陣や2、3年の生徒たちはまったく動揺していなかった。
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