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「あははははは!『クズ教師』か。いいねえ、最高!」
隣の教室にまで聞こえるのではないかと思うほどの、大きな笑い声。断続的に続くそれは、周囲を静まり返らせた。莉奈の瞳にも、わずかに怯えの色が滲む。
「…あーあ。お腹いたい」
ひとしきり笑い終えると、秋穂は今度脱力した様子で莉奈の肩に両手を置いた。びくり、と莉奈は驚いて硬直する。
「三沢」
「…な、何よ」
「あたしは確かにクズ教師かもしれないね」
俯いて話す秋穂の表情は、莉奈からは見えなかった。だが莉奈は、自らの勝利を確信し微笑んだ。
だって今、この女は認めたのだ。自らを「クズ教師」だと。
勝った。莉奈は体から力を抜いた。
その瞬間を待っていたかのように、でも、と秋穂は言葉を続ける。
「――あんたも十分クズだろ?」
そう言って秋穂が顔をあげた時、莉奈はひっと小さく悲鳴をあげた。
ひどく綺麗でひどく冷たい、凍てつくような視線が莉奈を捕らえていた。美しい半月を描いた唇は真っ赤で、透き通るような白い肌によく映えていた。
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