2.それはまるで

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「あははははは!『クズ教師』か。いいねえ、最高!」  隣の教室にまで聞こえるのではないかと思うほどの、大きな笑い声。断続的に続くそれは、周囲を静まり返らせた。莉奈の瞳にも、わずかに怯えの色が滲む。 「…あーあ。お腹いたい」  ひとしきり笑い終えると、秋穂は今度脱力した様子で莉奈の肩に両手を置いた。びくり、と莉奈は驚いて硬直する。 「三沢」 「…な、何よ」 「あたしは確かにクズ教師かもしれないね」  俯いて話す秋穂の表情は、莉奈からは見えなかった。だが莉奈は、自らの勝利を確信し微笑んだ。  だって今、この女は認めたのだ。自らを「クズ教師」だと。  勝った。莉奈は体から力を抜いた。  その瞬間を待っていたかのように、でも、と秋穂は言葉を続ける。 「――あんたも十分クズだろ?」  そう言って秋穂が顔をあげた時、莉奈はひっと小さく悲鳴をあげた。  ひどく綺麗でひどく冷たい、凍てつくような視線が莉奈を捕らえていた。美しい半月を描いた唇は真っ赤で、透き通るような白い肌によく映えていた。
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