3.警告か暗示か

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「先輩には内緒にしとこう」  パーカのポケットに両手を突っ込んで、秋穂は言った。    1時限目の授業が始まる10分前。授業の入っていない秋穂と新垣は、職員室へ向かうため階段を下りていた。 「でも、きっとその内バレちゃいますよ。城崎先生、真島先生のことになるとやけに敏感だし…」 「うー。そうなんだよねえ。先輩地獄耳だから…」  いや、そういうことじゃなくて。秋穂の言葉を訂正しようとして、新垣はやめた。  憂鬱になったらしい秋穂が、階段の踊り場で立ち止まり、脱力したように壁に寄り掛かる。 「あーあ。また怒られるのか。そして殴られるのか。鬱だー鬱だー」 「大丈夫ですよ。俺がちゃんとフォローしますから。今回のは俺にも原因があった訳だし」  新垣が慰めるようにその肩に優しく手を置いた。振り向いた秋穂の目の前には、新垣の爽やかな笑顔。  ガッキー。いい後輩を持ってあたしは幸せだよ。  感動した秋穂がその手を取れば、新垣はごくりと生唾を飲み込んだ。
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