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プロローグって何だろう?
「どこ見てんのよ!」
怒気も露わにそう叫ぶと、彼女は勢いよく右手を振りきった。
パシンと、とても小気味好い音が俺の左頬で鳴り響く。
そして一瞬、ぐらりと視界が揺らいだ。
「変態っ!」
殴られた衝撃で、俺の首はぐきりと左方向に捩じ曲がる。
正面に向けられた俺の右頬に向かって、彼女は怒鳴った。
「スケベっ!」
なじった。
「クズっ!」
罵倒した。
「二度と近付いて来ないで!」
拒絶した。
「同じ空気吸わないで!」
遠回しに死ねと言った。
そして俺に反論する余地を与えないまま、彼女は鼻息も荒く踵を返す。
「死ね、バーカ!」
最後の最後ではっきり死ねと言い残し、彼女は去って行った。
長沢 和人≪ながさわ かずと≫、十七歳。
人生初の失恋だった。
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