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それは俺が中学生になって、初めて中学に行く日の朝だった。
俺らが通っていた小学校は私服で通う学校だったので、中学校の制服にその日俺は浮かれていた。
途端に大人になった気がしていた。ものすごくカッコイイ気がしていた。
母さんと家を出ると、ちょうど朱利もお母さんに見送られるところだった。
「わーおはよう、ケンちゃん学ランだー!」
学ラン姿は今日初めて披露したので、朱利は挨拶を忘れない程度ではあるが、驚き嬉しそうにしている。
弟が中学にあがった、姉の心境に違いなかった。
「おはよう…朱利!」
恥ずかしかったけど、今日から中学生になるんだからとカッコつけて呼び捨てにしてみた。
すかさず後頭部に母さんのゲンコツが振るわれた。
「何偉そうに呼び捨てにしてんの!?朱利『ちゃん』でしょうが!」
「グーだ……」
俺が絶句してると、クスクス笑う朱利の声が聞こえた。
「そうよ、ケンちゃん。
今までの小学校と違って、中学校は上下関係がしっかりしてるんだから、年上の先輩を呼び捨てになんか絶対しちゃだめよ。」
「…はい…」
色んな意味でダブルパンチだった俺はすっかり意気消沈した。
登校する道すがら「よしよし痛かったね」と朱利に頭を撫でられて、もちろんすぐに機嫌は直ったが。
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