母、帰宅。

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駅前の広場は手前と奥に横断歩道がある。その横断歩道は車が行ったり来たりしているのでムリヤリ渡る事は危ない行為だ。 赤信号から青信号になるのを待っているとひたすら頭を下げ、お金を古びた帽子に入れて貰うのを待ち続けている無精髭を生やしたホームレスのジジィがいた。素通り出来たら良いもののそれだとどこか良心が痛む。仕方がなく財布から500円玉を入れると声を張り上げながら何度も何度も礼を言われた。 ああ、そうか…。 ストンと何かが自分の胸に綺麗に収まる。 生きてるんだ。皆、生きようと努力して何とか命綱で支えられてるだけなんだ。 それはあまりにも頼りない命綱で、すぐにでも切れてしまいそうな…。けど、皆それにすがるような思いで何とか生きてるんだ。そう思うと泣きたくなった。 「ルイ、お待たせ。」 「ユミ。」 後ろから背中を押され振り向くと鼻の頭を赤くしたユミが白い息を吐きながらマフラーを口許まで巻いている姿があった。 「今日は、寒いね。」 「ああ。」 「ルイは寒くないの?」 「寒い。」 「やっぱり。ルイは寒かったり暑かったりすると口数がかなり少なくなるもん。」 ケタケタ笑うユミの手を当たり前のように繋ぎポケットに入れる。 「行くか。」 「うん!」
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