動き出す歯車

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昨夜は雨が降っていて、水の笠が増していた。 川の流に逆らわないように女の子に近づいていく。 辿り着いた時には、女の子は俺にしがみついてきた。 「もう大丈夫だから」 俺の言葉に女の子はこくこくと頷く。 俺は彼女を抱えて、また泳ぎ出した。 服が水を吸い込んでいて、重くなった彼女を連れて戻るのには時間がかかった。 そして川岸に着くと、武人に女の子を引き上げてもらう。 「怖かったな。泣くなよ、もう大丈夫だから」 「ひぐっ…あ、ありがとぉ…!」 泣きじゃくる女の子を武人はあやすようにして背中を撫でて、自分の持っていた上着を彼女にかける。 それを横目に、俺も川からあがろうとした時だった。 「…っ!」 足が何かに引っかかるような感覚がした。 取ろうとしても取れない。寧ろ逆効果で下に引っ張られる。 不味い、溺れる…! 助けを求めようにも、武人は女の子をあやしていて此方の様子を気にもとめていない。 声を出そうとしても、俺の頭は水のなかに浸かってしまって音にならなかった。 息が出来ない。 本能からか、水から這い出ようと足掻くが、それも虚しく俺の体は川の底へと引き込まれて行く。 引き込まれて引き込まれてもう川の底に着くんじゃないかってくらい引き込まれて。 あれ、可笑しくね? いつまで経っても底に着く様子は無く、代わりに遊園地のコーヒーカップに乗って目を瞑りながらぐるぐると勢いよく回している様な感覚に陥る。 恐る恐る目を開けると… なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!!? 川の底にできた渦の様なものに俺は巻き込まれていた。 なにこれ!? 風呂みたいに水の抜ける様な栓が川にもあった訳!? そして俺はそれに吸い込まれそうになっているのか!? 冗談じゃない。 俺はそこから抜け出そうと足掻く。 だけど、一度巻き込まれて抜け出せる筈もなく。 体は酔いそうなくらいぐるぐると渦に吸い込まれていき、 ああ、おれ死ぬんだな… と思った時にはもう俺の意識はぶっ飛んでいた。  
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