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「な、なななな!?あんた何で此処に!?」
「何でって…暇だったから涼みに来たんだ」
「いやいや!俺が聞きたいのはそうじゃなくて!あんたも死んだのかって聞いてるんだ!」
「…………………お前、本当に頭おかしくしたのか?」
「だぁぁぁぁぁ!違う!頭は至って正常だ!」
俺は今天国にいるんだ。
そして残してきた親父に絶望を感じていたんだ。
なのにこの目の前にいるやつは当たり前の事の様に平然としている。
そう、俺の彼女だった柴崎歩は平然としているのだ。
その栗毛の長い髪を風になびかせ、服の上からでもわかる良いスタイルを黒の七分シャツとショートパンツ、おまけにワインレッドのマントの様なものに包み込んで。
「なにを惑っているかは知らないが、私はいたって健康だ。死んではいない」
「は、ははは…左様でございますか」
何かどっと疲れた。
それにしても、聞き捨てならない事をきいたぞ?
死んでないだって?
ってことは、必然的に俺も死んでないってことになる訳で…
「俺ってまだ生きてる!?ってことは親父の醜態を世間に晒さずに済む!?
よっしゃぁぁぁぁぁ!!」
「……やっぱり頭おかしくしたんじゃないか?」
「どうとでも言いやがれ!今は嬉しいからどうでもいい!」
手離しで喜んでいると、横から溜め息が聞こえてきた。
「まぁ、どうでもいいけど。その格好のままで街に行くなよ、変態にしか見えないから」
変態?
へんたい?
HE・N・TA・Iだとぉぉぉ!?
「喜びを噛みしめてるいたいけな少年になんたる暴言!?何処が変態なんじゃぁぁ!?」
「存在が」
「何ぃぃぃぃぃ!?」
思わず掴みかかろうとしたが、ふと気づく。
俺今上半身裸じゃね?
これで街なんか歩けば変質者にしか見えなくね?
「………………変態でした」
「ふむ、やっと認めたか」
「歩様ぁぁぁぁ!この可哀想な俺にそのマントを貸して頂けませんかぁぁ!」
「棗の匂いが着くと少し…いやかなり嫌だが、一緒にいる私まで変態な目で見られるのは問題だな。いいよ、貸してやる」
………………。
何だか失礼な言葉が聞こえた気がするが、しょうがない。
マントに免じて赦してやろう。
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