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「洗って返せよ」
「解ってるよ。ちゃんと洗って返しますって」
マントを受け取ると、俺はそれを身につけた。
よし、これで醜態は晒さずに済む。変態とは誰にも言わせない。
「それにしても、何でそんな姿だったんだ?」
歩が首を傾げながら尋ねてきた。
やはり学校一の美人と言われていただけに、その姿に少し見とれる。
中身はクールさを纏わせた男の様な性格なんだけどな。
「よくわかんねぇんだよな。川に溺れた小学生を助けて、渦に巻き込まれて、気づいたら夢と同じ場所にいた」
「夢…?」
「そう。毎日の様に見てた夢。…ってかこれ夢じゃないよな?死んでないんだから天国じゃないんだもんな?」
「夢じゃない。現実だ。」
「そうかそうか…って夢じゃなかったら此処はどこなんだ!?」
「グラディアス王国だ」
「ぐらでぃあすおうこく?」
そんな国あったか?
少なくとも地理を習っていた俺にはそんな国の名前は頭に入ってない。
「このヴェロニカ大陸の東側にある」
「ヴェロニカ大陸ぅ?」
そんな大陸、地球には存在しないぞ?
「何だ。棗は知らずに此処に来たのか?」
「知らずにって…何を?」
嫌な予感がする。
この先を聞いたら戻れないような、そんな気がして。
だけど、彼女は…現実はそんな俺を知ってか知らずか、事実を突き付けてくるんだ。
「ここは日本でもアメリカでもヨーロッパでも、そして地球でも無い。
『クリストリア』という世界だ。」
…あぁ、切実に。
誰かこれは夢だと言ってくれ。
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