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ピンクひらひら髭オヤジ…もとい俺の父親、英 時夫 (ハナブサ トキオ)は、ゴツい身体と厳つい顔に似合わず、何故かファンシーなモノが好きだ。
だから、あのピンクひらひらは好んで身につけている。
良い歳したオヤジが…とか色々思うところはあるが、敢えて何も言わない。
否、言えないのだ。
口にしようとしたその瞬間、何かのレーダーでも付いているのか、察知して凄い形相で睨む彼は、人間とは思えない。
そして彼の恐ろしさを身に染みて解っている俺としては、口を出さないのがルールとして決まっていた。
触らぬ神に祟り無し、って言うしな。
「朝早く起きて作った俺と玉子を産んだ鶏に感謝しながらよく噛み締めろ!」
…目玉焼きくらいで何を。
「い…頂きまーす!」
慌てて口にパンを突っ込んだのはギラギラの目で睨まれたからだ。
そして今日も鶏が腹を痛めて?産んだ玉子を口に入れて、牛乳を流し込んだ。
あ、やべぇ。課題やってないんだった。
どうせ数学だし、何とかなるかな。
学校着いてからやるか。
そんなことを考えていると、いつの間にか家を出る時間に。
「まっず!親父、俺もう出るわ!」
「そのあられもない格好でか?」
「いやいや着替えるから!」
あられもない格好って。
女じゃあるまいし。っつうか頬を赤く染めるな!!
慌てて干してあるYシャツをひっつかみ袖を通して下の制服を履く。
片手でシャツの釦を閉めながら歯を磨き、髪を整えると、俺は鞄を背負って玄関で靴を履いた。
「今日は俺、仕事で居ないからな」
「あ―、適当に晩飯作って食うから大丈夫。」
「そうか、…気をつけて言って来るんだぞ?」
「?…行ってきます」
急に真面目な顔になった親父に少し疑問に思いながら家を出た。
「…気をつけるんだぞ、棗」
もう一度そう親父が言うのを背中で聞きながら。
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