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店の窓から見上げた空は
曇天だった。
「降りそうだな」
臨時休業にした店内は静
まりかえっている。
「大丈夫かな…」
俺の声が天に届いたわけ
でもないだろうけど、空
から白いものがちらつき
始めた。
空が泣いてる。
そんなことを思った時、
扉に備え付けられたドア
ベルが音をたてた。
『珍しいね。臨時休業な
の?』
扉を開けたのは店の常連
さんで今日俺が待ってた
人。
「うん、たまにはね。こ
ういう日があってもいい
かなって思ってさ。入っ
て」
『いいの?』
「いいよ」
今日の彼は黒いスーツに
きちんとネクタイを締め
ている。
いつもここに来る時のラ
フスタイルじゃない。
そして、顔には無理矢理
貼付けたような笑顔。
「思ったより早かったん
だね」
『うん。最期まで見届け
られなかった』
彼は俯くようにテーブル
を見つめた。
「甘いものでも出そうか
?」
『ありがとう』
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