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ラジオから流れるメッセ
ージに眼の奥が熱くなる
。
駄目だ。俺が泣くわけに
はいかない。
静かに息を整えて、パー
ソナリティがメッセージ
を全て読み終わるのを待
った。
ラジオが曲に変わる。
俺はホットチョコレート
のカップを掴むと彼の座
っている席に運んだ。
彼は何も見えないはずの
空間をじっと見つめてい
た。
「ホットチョコレート。
熱いから気をつけて」
『うん。ありがとう』
彼はカップに口をつけた
。
『無理して笑う必要ない
んじゃない?』
余計なことと思いながら
どうしても言わずにはい
られなかった。
今日の一度だってこの人
が泣いてるのを見ていな
い。
『約束、したから。あい
つが旅立つ時は笑顔で送
りだすって。それにまだ
、実感がなくて』
そう言った彼の頬に一筋
の涙が伝った。
だけど、本人は気付いて
ない。
『最期まで見届けようっ
て決めてたんだ。だけど
、無理だった』
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