けじめ

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「俺が秀玲に……?」 「聞いたかもしれないが、うちは全国ベスト4。 でも桜庭がいれば……全国制覇も夢じゃないんだ」 「全国制覇ですか……」 「樹でも届かなかった夢だ。 失ってしまった時間を……青春をまたここで得るつもりはないか?」 監督は俺の目をじっと見る。 その表情は真剣そのもの。 監督は本気なんだ。 俺なんかに対して、誠意を見せてくれている。 俺は……。 「全国制覇への夢……青春……普通なら誰もが持てるものなんでしょう。 正直俺も、掴めるなら掴みたいものではあります」 「じゃあ……」 「でも、そのお誘いには応えられません。 申し訳ありません……」 俺は深々と頭を下げる。 心から申し訳ないと思いながら。 「やはり、UNDERDOGで戦うのか……」 「……はい」 「お前はまだ17……まだやり直せるのに……」 「……それでも俺は決めたんです。 青春よりも、もっと大事なものを取り返すために……!!」 俺は頭を上げ、監督に言う。 「……お前もあいつも、どうしてそんなに強いんだ」 「あいつ……イツキですか」 「あぁ。 あいつもな……」 監督は何か言いかけて、すぐに口を閉じた。 イツキが強い……? だがその疑問は、監督の口から明かされることは無かった。
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