名前

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「そんなに好きなの?」 「…え?」 や、やばい…。先生と2人っきり…!!と心で興奮しているのとは裏腹に冷静に先生の質問に答える。 答えるって言うより質問の意味がわからず、聞き返すのが正しいが。 「勉強教えるの」 ザザ…と開いていた窓から風で揺れた木の音が入ってくる。 「……はい。好きですよ」 葉山先生には私が誰かに勉強を教えているところを見られたことはない。 今日も、見られてない。 なぜ、私が勉強を教えているのを知っているのか…。 「なんで、知っているんですか?」 疑問に思い、聞いてみる。 私は、どこかで期待していた。 先生が、陰から見ててくれたのかな…って。 でも、先生から帰ってきたのは私の期待を裏切るもので。 「…こないだ、神崎と同じクラスの子が言ってたから。「神崎さんのおかげで英語で50点代取れた」って。名前は、忘れたけど」 でも、先生の最後の言葉。 「名前は、忘れたけど」って、その子には申し訳ないけど。 でも。 先生、私の名前、知ってた。
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