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「うん。シルクの側にいる。レイやヒュースケン、葛と一緒に。」
「何しているの?!また危ない事を…!」
「だ、大丈夫。色んな仕事に手を着けているけど、あの人器用だから…。」
次はアインがたじろいた。シェリルもそこまで発奮しているラウルを初めて見た。
きっと、ラウルはブルーノが好きだったのだろう。劣等感を抱きつつも、兄として人並みの好意と家族愛を抱いていたのだろう。嫌いな兄なら劣等感は抱かない。嫌悪感や嫉妬から生まれる憎しみが大きくなる。
ラウルが劣等感で押しとどまっていたのは、まだブルーノの愛着があったからだ。心の奥底で気にかけていたからだ。
「ラウル、お兄さんの心配は分かるけど。今は抑えて、ね?」
「あっ…すいません。」
ようやっと我に帰ったラウルは恐縮しながら引き下がった。
「ごめんね。アイツブラコンだからさ。」
「チーフ!」
「事実でしょ?…っと、話が逸れたか。戻そっか。」
ヲリエが話を戻すと、アインも居住まいを正した。
「率直に云わせてもらうね。あたし達からすると…シルクさん達がサンドハーストに介入してくるのは、かなり今更だと思っちゃうんだ。」
ヲリエの口振りは優しいが内容は厳粛だ。
「サンドハーストはもう嘗てのサンドハーストじゃない。良い悪いはさておき、もう変わっている。そんな中で何をするつもりなの?正直に云うと、エドガーケースで決裂した人間がしゃしゃり出てくる状況じゃない。」
アインはヲリエの言葉を余す事無く、聴き届けた。そして、たっぷりと間を使って言葉を紡ぐ。
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